2025年3月22日、茨城県土浦市の「りんりんポート土浦」で「つちうら春のサイクルフェス2025」が開催された。このイベントは土浦市が主催し、株式会社アトレ(プレイアトレ土浦)と合同会社JOYNSが運営。

 春の穏やかな気候に恵まれたこの日、エントリー制コンテンツ参加者132人含む約500人が来場し、「りんりんポート土浦」の施設とその周辺は自転車愛好家で賑わいを見せた。未就学児から大人まで幅広い年齢層が自転車を通じた体験を楽しみ、多世代が交流する様子が見られた。

豪華ゲストと走る!ライドイベント

 イベントの主軸となったのは、著名人をゲストに迎えた2種類のライドイベントだ。サイクリスト必見のこのガイドツアーでは、参加者がゲストとの交流を通じて非日常的な走行体験をし、「土浦ならではの魅力」を味わった。ライドイベントは当日欠席はあったが、初級・中上級ともに満員の参加受付だった。

桜並木を巡る初級者コース

 初級者向けコース「土浦さくらポタリング」は、モデル・タレント・トライアスリートの道端カレンさんと元プロロードレーサーのケイティさん(西尾憲人)をゲストに迎え、15kmの平坦コースを巡るツアーだった。中学生以上2,000円、親子(子ども:小学生以下対象)1,500円という参加費で、21人がこのコースに参加した。

 参加者は春の訪れを感じながら、土浦の桜並木を巡るサイクリングを楽しんだ。土浦駅近くの「亀城公園」では、カレンさん、ケイティさんと参加者によるフォトセッションも実施され、思い出の一枚を撮影する光景が見られた。ライドイベントにはカメラマンも帯同し、参加者の走行シーンを記録した。

地元プロと走る中・上級者コース

 中・上級者向けコース「ヒルクライムテクニック&土浦堪能ライド」は、イナーメ信濃山形所属プロロードレーサーのハヤティさん(西尾勇人)と自転車系インフルエンサーのシモジマンさん(下島将輝)をゲストに迎え、約40km、標高差約500mのコースを走行するもので、37人が参加した。

 注目すべきは、ハヤティさんこと西尾勇人選手が2024年5月に茨城県土浦市に移住した点だ。この地域密着型のプロレーサーとして、コース設定は西尾選手自身が監修。おすすめルートを採用した。朝日峠も含めたこのコースでは、最大強度4~5倍のセクションを地元に住むプロと一緒に走りながら効率的な登り方を実践的に学ぶことができた。エイドステーションでは、西尾選手お薦めの地元土浦の「レンコン最中」などが提供され、参加者は走行の合間に地元の味を楽しんだ。

 参加者からは「プロやインフルエンサーと近い距離で走れた」「実践的なテクニックを学べた」「サポートライダーの丁寧なガイドが良かった」など好評価が多数寄せられた。単なる観光ライドではなく、プロから直接指導を受けられる貴重な機会として、県内外から自転車愛好家の関心を集めた。

熱気あふれるオフロードファンレース

 りんりんポート土浦の芝生エリアでは、障害物を配置した特設コースで「オフロードファンレース」を開催。「仮装・コスプレ・キッズ集合」をテーマに、小学5年生以上の大人部門と、キッズ部門(未就学児~小学4年生)に分けて競技を実施した。

 小学5年生以上~大人部門では「仮装オンリーTT&決勝トーナメント」を実施。参加者は障害物のあるショートコースでタイムトライアルに挑み、時間内であれば複数回のチャレンジが可能というフォーマットだった。最速タイム順で上位のライダーが決勝トーナメントに進出し、決勝トーナメントはライダー3人の勝ち抜き形式で行われた。12人が参加し、カラフルな仮装やユニークなコスチュームでコースを駆け抜ける姿に、観客からは歓声と拍手が送られた。

 キッズレースは小学3・4年生、未就学~小学2年生の2カテゴリーに分けて行われ、計18人が参加。障害物のあるショートコースで予選組毎にレースを行い、予選の着順毎に決勝でレースを実施し、全員が予選と決勝の2レースを体験できる形式だった。初めてレースに参加する子どもも多く、保護者の熱い声援を受けながら懸命にペダルを漕ぐ姿が印象的だった。

会場を彩る仮装大賞コンテスト

 レース参加者を対象とした「つちうら春のサイクルフェス仮装大賞」も大いに盛り上がった。参加者のチェキ写真を会場内特設ブースに掲示し、来場者が好きな仮装にシールを貼って投票するという形式で、得票数により「サイクルフェス仮装大賞」を決定した。14人がエントリーし、ティラノサウルスの着ぐるみやヒーローコスチュームなど、創意工夫を凝らした仮装が会場を彩った。

ゲストトークショー&じゃんけん大会

 ライドイベント後には、メインステージでゲストによるトークショーとじゃんけん大会を開催。カレンさん、ハヤティさん、シモジマンさん、ケイティさんの4人が登壇し、MC・須藤むつみさんの進行のもと、自転車との出会いやプロの世界の裏話、土浦のサイクリング環境の魅力などを語った。

 ハヤティさんは「土浦は筑波山側と霞ヶ浦沿いという、山と湖の両方が楽しめるのが最高」「サイクリング環境の良さに惚れ込んで2024年5月に移住した」と地元愛を語り、カレンさんは「自転車を通じて自分自身の成長を感じるのが好き」と自転車の魅力を伝えた。

 シモジマンさんは「自転車の魅力は自由。自分の力で進む感覚と、それによってたどり着ける景色の美しさ」と語り、ケイティさんは「東京からも近く、電車で気軽に来られる」「JR常磐線でサイクルトレインも運行している」と土浦のアクセスの良さをアピールした。

 トークショー後のじゃんけん大会では、ステムデザインのフーディーパーカーやALTALISTのアイウェア、IREUDAKEのインソールなど多数の賞品をかけて白熱したバトルが繰り広げられ、会場は大いに盛り上がった。

充実の自転車関連コンテンツ

 イベント会場では、スポーツバイク試乗会から子ども自転車教室まで、様々な自転車関連コンテンツを展開。FACTOR、YONEXによるスポーツバイク試乗会では、最新モデルの試乗機会を提供し、多くのサイクリストが試乗を楽しんだ。

 りんりんポート屋上では「親子で楽しく学ぼう!はじめての親子自転車教室」を開催。身長95cm~125cmの子どもと保護者を対象に、全4回に分けて実施された。正しい乗り方や安全な走行方法などを学ぶ機会となり、多くの親子連れで賑わった。

 自転車関連アイテムの展示販売会も充実しており、9つのブランド・ショップが出展。ALTALIST(NCD)のアイウェア、IRERUDAKE(IRERUDAKE)のインソール、EXLUB(IRIS)の自転車潤滑剤、GALFER(NASK Trading)のディスクブレーキ用ローター、Cyclone(Cyclone)のハンドメイドサイクルキャップ、STEM DESIGN(STEM)のサイクルアパレル、Nakashima Cycle Factoryのサイクルアパレル、TAS CYCLEのスポーツ自転車、northwave(ウインクレル)の自転車シューズなど多種多様な商品が並び、自転車愛好家の目を楽しませた。

自転車以外も楽しめる多彩なアクティビティ

 イベントでは自転車関連コンテンツだけでなく、自転車がなくても楽しめるアクティビティも用意された。BIKE&CAMPによるキャンプワークショップでは、アウトドア初心者向けにマシュマロ焼き体験などを実施。笠間モルッククラブによるモルック体験会も開催され、北欧発祥のスポーツを初めて体験する参加者も多く見られた。

 ユニークな企画「自転車でだるまさんがころんだ!」では、遊びながらブレーキ操作を学ぶ機会を提供。特別ゲストとしてティラノサウルスの着ぐるみを着たスタッフも登場し、「ティラノサウルスとどっちが上手に止まれるか」を競うという演出で、子どもたちから歓声があがった。

 会場には5店のキッチンカーも出店し、地元の特産品を使用したメニューや軽食、ドリンクなどを提供。サイクリングの合間の休憩や観戦しながらの食事を楽しむ姿が見られた。

自治体連携によるPRブース展開

 サイクリング施策を展開する自治体などによるPRブースも設置された。茨城県スポーツ推進課、茨城県土浦市サイクルシティ推進室、愛媛県今治市サイクルシティ推進課、JR土浦駅、プレイアトレ土浦の5団体がブースを出展し、サイクリングマップなどの設置・配布を行った。

 特に注目を集めたのは、愛媛県今治市サイクルシティ推進課のブースで、しまなみ海道の情報や今治市のサイクルツーリズムの取り組みを紹介。土浦市と今治市は共に「自転車のまち」を推進する自治体として連携を図っており、互いの取り組みやノウハウを共有する場ともなった。

 JR土浦駅のブースでは常磐線サイクルトレインの情報が紹介され、自転車を電車に乗せて移動できるサービスの認知度向上に貢献。会場までの交通手段として常磐線サイクルトレインを利用した参加者も見られ、サイクルトレインの利用促進にも一役買った。

地域に根ざしたイベントの成功

 「つちうら春のサイクルフェス2025」は、多彩なコンテンツと豪華ゲストの起用、地域と連携した運営体制により、幅広い年齢層の参加者から好評を博した。世代間を超えた交流も随所で見られたほか、ライドイベント、レース、展示販売、体験コーナーなど様々な角度から「自転車の楽しさ」を発信し、「自転車のまち土浦」の魅力を効果的にPRすることに成功したといえるだろう。

 アンケート調査では、9割以上が「土浦のサイクリング環境の魅力を感じた」「次回も参加したい」と回答。「自転車のまち土浦」のブランド確立に向けた重要な一歩となったのではないか。

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